今回のタイトルにでている松嶋シェフはフランスニースにて2006年より10年連続ミシェラン1⭐️を獲得。フランス芸術文化勲章、農事功労章シュバリエなど受賞多数され、2020年よりナチュラルローソンのヘルシーで体に優しいお弁当シリーズのカレーなどを監修されています。
トマトソースのパスタに衝撃を受けた理由とは?
さて。今回は松嶋シェフがフィレンツェの郷土料理が美味しいレストランでドライトマトソースのパスタを食べて衝撃を受けたとわざわざ連絡をくれました。
(日本の夜中の時間帯は話し相手が激減するので時々呼び出されるのです。笑)
フランス料理を確立されたのがフランス王アンリ2世に嫁いだフィレンツェ大富豪メディチ家のカテリーナ・デ・メディチがイタリア人の料理人を引き連れ、そのイタリア料理人たちがフランス料理の基盤を創っていったとも言われています。
今回は松嶋シェフの発見として 乾物の「ドライトマト」を使ったパスタにこのフィレンツェっ子のルーツと栄養学的にも優れていることを食べて感じて帰ってきたという話なんですが、、、。
フランス料理のシェフがイタリア文化を考える
松嶋シェフはフランス料理のシェフですが、フランス料理のルーツはイタリアにあり、そして本人の祖国は日本、ということで特にこの3各国の食文化をズーーーーーーーーっと研究している。ある意味オタクです。(失礼!笑)
世界から評価されたシェフが、フランス料理で磨いたテクニックとか、高級食材とか、世には珍しい衝撃の一皿とかに全然興味ないそうで。
「食」のことをズーーーーーーーーーーーっと禅問答してます。笑
食から宗教を考えたり、食からヨーロッパの歴史を考えたり、
食から科学的に栄養価を考えたり、食から現代病を考えたり
食から歯や唾液のメカニズムを考えたり、食から社会問題を紐とりたり、、、、
と、必ず始まりは食から永遠と考えるシェフ。
食の原点はウマミで、そのウマミは気候や風土や自然の中で育まれてきた
人間の知恵であり調和していたからこそ、各地でいろんな郷土料理があった。
郷土料理のルーツを知ることからその土地で育まれた文化や食生活、習慣などがわかってくると言います。
その前に、意外と見落とされがちな歴史の1ページが浮かんできます。
イギリスで起こった「産業革命」
産業の変化はすでに18世から始まったとされています。工業化が発展し、一連の技術変革。機械化、量産化がここから始まりました。
ヨーロッパはイギリスの産業革命やフランス革命後の凄まじい科学技術の発展で、第1次世界大戦、第2次世界大戦と植民地制覇の拡大があり、人々の生活もここで一気に変化して現代の基盤が形成されました。 このおかげで今のわたし達の生活は成り立っているといっても過言ではありませんよね。
わたしたちが義務教育で習った日本は、第2次世界大戦後に焼け野原になったところから高度成長期を遂げて現代がある。という流れだったと思うのですが、明治維新以降、このイギリスで起こった産業革命やフランス革命で飛躍的に進歩した科学技術を輸入し、終戦後はフル活用して高度成長し産業を発展させた。とも言えるのではないでしょうか。
日本はラッキーなことに、産業化のベースをヨーロッパやアメリカから輸入することができた。普段は工業化や技術革命と聞くと、自動車や飛行機など機械重工業を、家電製品であれば冷蔵庫やTVなどを連想しますが、食の分野も産業化で大きく変化しました。
食の産業革命
それまでは保存食として、乾燥、薫製、オリーブ漬け、酢漬けなど冬にも食材に困らないように備えなければいけなかった食材たちも「産業革命」の技術により保存の仕方や、方法がまるで変わっていったのです。
大量の食用瓶の製造が可能になり、大量の食用缶の製造で缶詰が開発され、乾燥パスタなどの大量生産も可能になるなど、それまでは大変貴重だった塩や砂糖も 産業革命の恩恵で機械化に成功し、更には化学調味料も大量生産が可能になりました。
こうして、今わたしたちが食べることができている贅沢な嗜好品もどんどん生まれていった。
流通も発展し今では世界中の食品が身近に手に入ります。便利で豊かな食生活になった今、多くの恩恵を得ていますがその反面、フードロスという食べれるのに廃棄される状態が
先進国では深刻な問題であり、メタボ・肥満・生活習慣病など産業革命前には起こらなかった現代人病がこんなにも蔓延して社会問題になっていることも周知の通りです。
食に限らず、ファッション・デザイン・生活環境、、、
すべて産業革命のビフォー・アフターで全然違いますよね。
科学技術の変化はこんなにも大きい。
なので<産業革命>がヨーロッパの今を話すときに思い出していただくとまた違った解釈で理解できるかもしれませんね。
トマトの渡来
せっかくなのでトマトについてもちょっとだけ。
トマトはラテンアメリカ大陸で発見されたお野菜で、大航海時代後、16世期後半にヨーロッパへ入ってきました。トマトの生産にもってこいの気候であるイタリアにも徐々に浸透し、料理にも使われるようになり、トマトソースが誕生していきます。
元々、イタリア各地では冬の食料保存法も長けていたのでトマトも乾燥させて冬の保存食にしたのでしょう。
トマトはイタリア語でPomodoroポモドーロです。 当時フランス語でPomme d’or(黄金のりんご)もしくはPomme d’amour(愛のりんご)がそのままイタリア語化されて呼ばれるようになりました。
ドライトマトを使ったトマトソースのパスタ
フィレンツェのパスタソースを食べた松嶋シェフは、ハッとしたそうです。
素人であればクリーム状になっているこのソースを食べたところで普通のトマトを使ってるでしょ。くらいに思うところをいやいやいやそんな簡単な味ではない。と、ピーン!ときたそうです。笑
わざわざ、ドライトマトを利用しているその一皿から色々と想像が沸いたよう、、、。
ドライトマトはわざわざ保存食用に乾燥させたということは産業革命前のレシピであること。ということは、季節も冬などトマトが栽培できない時期にも栄養を補える食材として活躍したのだろうと。
”先人はパスタやスープなどに入れて栄養素を補給していたに違いない!”
フィレンツェの老舗レストランで、ドライトマトを利用したトマトソースのパスタを食べながらフィレンツェの食のルーツを知って改めて食の奥深さを学んだと言ってました、、、。
食材から色々と想像するとおもしろい
普段梅干しを食べながら、日本の食文化とかは考えたことがないですが、今回は松嶋シェフのパスタの一皿の話から、産業革命やイタリアの歴史にまで話が盛り上がって面白かったのでこちらのブログでもご紹介させていただきました。
ちなみにミラノではスーパーに行ってもドライトマトは売っていないところが多いです。かろうじて、オイル漬けのドライトマトが売っているかどうかくらい存在力があまりありません。フィレンツェの市場に行けば今でもドライトマトは売っているのをよく見ます。
イタリアでお食事をされるときにでも、イタリアの歴史など感じながら食べていただくのにお役に立てたら幸いです!
最後までお読みいただきましてありがとうございました!
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松嶋啓介(Keisuke Matsushima)
1977年福岡生まれ。“KEISUKE MATSUSHIMA”オーナーシェフ。
2006年より10年連続ミシェラン1⭐️を獲得。
フランス芸術文化勲章、農事功労章シュバリエなど受賞多数。
ニース https://keisukematsushima.com
東京 http://keisukematsushima.tokyo
著作:「塩なし」料理理論
https://www.amazon.co.jp/最強「塩なし」料理理論–松嶋–啓介/dp/4074424592
コラム:フォーブス・ジャパン https://forbesjapan.com/author/detail/926
インタビュー記事など他多数
Youtubeチャンネル: Keisuke Matsushima
身体にも心にも優しいお家でできるレシピを紹介中。
各業界トップで活躍しているプロ達との対談も興味深い。
啓介さんとYoutubeのSpremuta Milanoチャンネルで色々とお話しした動画も♪
松嶋啓介シェフにインタビュー「喰い改めよ」イタリア再興戦略を聞いた。(前編と後編)https://youtu.be/XOSFehgJl7o
https://youtu.be/EQearhrZHkE
松嶋啓介シェフの「塩なし旨味ルネッサンス」アスパラとツナのパスタhttps://youtu.be/8rY7cD9RL2E