2021年5月25日にADIデザインミュージアムがミラノにオープンしました!
Compasso d’Oro コンパッソ・ドーロ ”ゴールデンコンパス”アワードという、イタリアで最も名誉なデザインアワードの受賞作品の全てを、ミュージアムにて一般公開されることになりました!
2020年にオープンする予定でしたが、コロナの影響で延期となり、ようやく念願のオープンとなりました。
せっかくなので、ゴールデンコンパスアワードの由来や、どんなデザインアワードなのか。そして、ミュージアムの中をご紹介していきたいと思います♪
“コンパッソ・ドーロ”アワードの成り立ち
#compassodoro troppo bello! Time to #celebrate pic.twitter.com/Ft9ToI50NK
— francesco casoli (@CasoliF) June 22, 2018
このCompasso d’roは、イタリアでは大変名誉ある賞として長年君臨しています。 メイド・イン・イタリーだけでなく国際的に評価に値するデザインにも賞を授与しています。
イタリアメーカーからの依頼で日本人のデザイナーや建築家の方々の製品もこの世にたくさんありますが、世界でも有名な喜多俊之氏(アジア人初)や伊東豊雄氏もゴールデンコンパスを受賞されています。そのほかにも日本人のデザイナーの製品も受賞されています。
日本のデザインアワードとして有名なグッドデザイン賞も、歴史は古く1957年から開催されていたそうですが、コンパッソドーロ賞はどうなんでしょう。
主催しているADIのホームページに記載されているイタリア語からピックアップしてご紹介しますね。
Compasso d’Oro コンパッソ・ドーロ(ゴールデンコンパス)は、イタリア 建築界の巨匠ジオ・ポンティ氏がイタリアデザインの価値やクオリティを証明することを目的として提案し、1954年に小売業のラ・リナシェンテ社が採用したのが発端です。
1958年以降、ADI(Associazione per il disegno industriale インダストリアルデザイン協会)が独占的に主催。 世界の産業界の中でも歴史も古く、名門のデザインアワードです。
これまで60年以上もわたり、350以上のプロジェクトが受賞、およそ2000ほどのプロジェクトが佳作を受賞しています。2001年より受賞した全てのプロジェクトはADI財団がゴールデンコンパス賞の永久コレクションとして収蔵しています。
ADIホームページよりイタリア語抄訳
コンパッソ・ドーロも歴史が長いですね! 日本では金のコンパス賞と記載されることもありますが、こちらの記事ではゴールデンコンパスで統一しました!
“コンパス”という名前の由来は?
Here’s the winners of the XXIV edition of the @compassodoro ADI 2016. Discover them all! https://t.co/kplA5p6vBr pic.twitter.com/FC848Ja6uv
— Archiproducts (@archiproducts) June 21, 2016
イタリア語でキャッチコピーとして “Compasso d’Oro Misurare il Mondo” があります。
(コンパッソ・ドーロ、ミズラーレ・イル・モンド)と書かれているんですが、「世界を図る金のコンパス」とでも訳していいでしょうか。
コンパスは、古代ギリシャ時代には使われていたと言われ、幾何学を描くのに使われていた道具の一つです。
製図を行えるコンパスと、地球の形のように円を描けることから、コンパスで描く世界を、このデザインアワードに託したのでしょうか。 素敵なネーミングですね!
コンパッソ・ドーロアワードの審査方法は?
日本のグッドデザイン賞の場合は、一般応募より審査されて受賞されますが、コンパッソ・ドーロあらかじめ登録されたADIデザインインデックスの中から選出されて、その年のコンパッソ・ドーロを審査するようです。
その年のADIデザインインデックスに公開されたプロジェクトの中から最も優れたデザインを、ADIに所属する専門ジャーナリスト、デザイナー、評論家、見識者、歴史研究家、その他外部の専門家なども含めたメンバーによる構成の常設オブザーバーであらかじめ入選されたものから、ゴールデンコンパス賞審査を開催します。
そして、質の高いデザインはもちろんのこと、サステナビリティ(持続可能)を特に考慮している製品や製品のシステム、製品研究、理論ー批判的研究、企業研究、サービス、社会的イニシアチブなど全てが審査対象として選出されます。
ADIホームページよりイタリア語抄訳
ADIデザインインデックスには、企業・デザイナー個人問わず応募が可能。
そして、環境に配慮され、社会や人々へ価値をもたらすものであるかどうかなど審査されて選出されていきます。
We are very proud to announce that the Mogu Acoustic Panels have entered in the ADI Design Index 2020 and it’s now short-listed for the prestigious ADI Compasso d’Oro Award #adidesignindex #adidesignindex2020 #adidesignmuseum #compassodoro #mogu #mycelium #biofabrication pic.twitter.com/wgwypy7MjT
— mogu (@mogumycelium) June 4, 2021
イタリアのメーカー(オーガニックの生地)もADIデザインIndexで公開されていることをニュースにするほど。名誉あることなんですね!
“デザイン”のカテゴリーは幅広い!
コンパッソドーロアワードにはこのデザインインデックスでの公開が必須条件となりますが、ここのデザインカテゴリーは以下のように分かれています。
- くらしデザイン (空間・住環境)家具やインテリアなど
- パーソナルデザイン(服飾・身の回り)ファッション、小物、日用雑貨など
- フードデザイン 食、キッチン道具など
- モビリティーデザイン(移動手段)車・列車・飛行機など
- オフィスデザイン(労働環境)空間やオフィス家具など
- システムテクノロジー&マテリアルデザイン(開発技術、持続可能な原料の生産等)エコ素材や、エコ素材を生産するのに必要な機器の開発など
- コミュニケーションデザイン グラフィックデザインなど
- エキシビジョンデザイン 展示館・展示ブースデザインなど
- ソーシャルデザイン 地域社会の発展に貢献する街づくりデザインなど
- 企業リサーチ (デザインの観点からのプロモーション戦略や社内や地域での開発研究)
- 理論・歴史・評論・出版計画のリサーチ (広報・文化的戦略や調査・地域や企業の価値研究)
- 若者専用プレート (卒論等の学術研究、調査、プロジェクト他)
デザインと言われると、ファッションや車、家具が頭に浮かびますが、空間や環境そしてコミュニティに対してもデザインという言葉が使われているのがよくわかります。
ADIデザインミュージアム
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ミュージアムのロケーションはミラノでもチャイナタウンと言われるパオロ・サルピ地区に近く、敷地は1930年代頃はトラム車庫や馬車用の厩舎として利用され、その後は電力会社の施設でした。
常設展示”The Spoon & the City” コンパッソ ・ドーロ歴代の受賞作品
Il cucchiaio e la città. (イル・クッキアーイオ エ ラ・チッタ)スプーンと都市というタイトルの常設展示が見学できます。コンパッソ・ドーロを通して1954年から今日まで受賞してきた製品のコレクションです。
これまでに、受賞された製品は見る機会はあったとしても単体で見るのが普通だったので、歴代の受賞した製品が全て勢揃のミュージアムはまさに待望だったと思います。
終戦後、イタリアはすぐに産業に危機感がありました。ご近所のドイツが優れた製品を大量生産化するのに成功していたからです。
ドイツを超える生産技術を持つか、もしくは違う土俵でアピールするかの選択を迫られた企業がオリジナリティーを売りにアピールしたのがそもそものイタリアデザインの始まりです。
こうして、独創的で、遊び心のあるイタリアのデザインが世界で評価され、デザインと言えばイタリアと言われるまで発展していきました。
デザインがなかったらイタリアの経済はここまで発展していなかったんです。
デザインを追求すると共に、そのデザインを製品化する職人の技術も共に発展したからこそ、メイド・イン・イタリーは確立したのでした。
そんなイタリアのデザインの歴史を凝縮して観ることができるミュージアムなんですね!
1950sから今日までのデザインが集結!
イタリアに住んでいると、世界的に有名な家具デザインに触れる機会は多いです。
レストランや交流のあるデザイン業界の友人達のホームパーティーに呼ばれると、必ずと言っていいほど歴代の有名デザイナーの家具や食器などがあったりするので、いつの間にか、これはどこどこメーカーの誰がデザインしたとかで話が盛り上がったりなどして学べるので、ちょっとはなんとなくわかってきます。笑
そんなイタリアの生活でも愛され続け、慕われている数々の名作もズラリ。1950年代からのデザインのはずなのに、年代を感じさせない斬新さ、ウィットに富んだデザインでいっぱいです。
パネルや設計図も展示されているので、内部の構造もわかるようになっているのはとても興味深いですね!
デザインでライフスタイルも左右される?
オリジナリティを<デザイン>で表現し、イタリアの国中でもそれを誇りにして発展してきました。それを再認識されてくれる場所でもあると思います。
例えばなんですが、こちらの弓の形をした照明”ARCOアルコ”は、なんとなくみたことがある方もいらっしゃるかもしれません。アーチの長さは2m以上あります!
イタリアデザインの巨匠アキッレ・カスティリオーニ氏がデザインし、1962年にフロス社(イタリア高級照明メーカー)から発表されたものです。
今からもう60年前の製品なのに、大胆なアーチのフォームと、大理石の柱の存在感もあり、全然古さも時代も感じさせません。ニューヨークのMoMAにも永久収蔵されている世界の名作です。
日本では、今でも成功してお金持ちになったら購入する照明とか、セレブ家庭によく置かれているとか、もはやステータスとしての価値まである照明ランプです。
これがデザインの生み出すパワーなんでしょうね。
このレベルの製品が陳列されているので、いろんなデザインを0から創造して生み出された製品の数々に感動します! イタリアデザインの歴史や時代背景を理解して訪れると面白味がぐんと増しますね!
ADI初代会長でカルテルの創業者ジュリオ・カステッリ氏の展示も
カルテル社は日本でも有名なイタリア家具メーカーの一つです。エンジニアだったジュリオ・カステッリ氏が創業。そして、ADIの初代会長を努めたのもカステッリ氏です。
そのタイトルも「デザインシステムの企業カルチャー」。展示自体は小さなスペースでしたが、カステッリ氏のエンジニアとして、機能性や高品質を追求しながらも、デザインに対しての見識や理解力も相当なものだったことが伺えます。
世界トップメーカーとして今でも君臨している生みの親のパッションが伝わってくる展示でした。
デザインに貢献した先代のイタリア人がいたからこそ、こうしてミュージアムも設立できたと思うと、デザインに対しての意気込みは相当なものだったのだろうと感じずにはいられません。
イタリアという国がデザインや美意識に対してものすごく力を入れていることを改めてしれたミュージアムの訪問でした。
ADIデザインミュージアムへのアクセス
アドレス: Piazza Compasso d’Orop,1 – 20154 Milano
(入口は Via Ceresio 7 または、Via Bramante 42、Piazzale Cimitero Monumentaleから入場可能)
火曜~日曜 10:30~20:00 (月曜休み)
最寄り駅:
地下鉄 M5 Monumentale 下車
M2 Garibaldi FS 下車
入場料: 大人12ユーロ
子供10歳以下は無料
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デザインの世界も楽しいので、もし興味がありましたらぜひ足を運んでみてくださいね。
この度も最後までお読みいただきありがとうございました!!